乳がんの教科書

「リンパ節郭清」とは?

乳がんについて調べていると、よく、
「リンパ節郭清」という言葉にぶち当たります。
この言葉の意味、ご存知でしょうか?

 

そもそも「リンパ」とは、細胞組織の間の体液のこと。
全身の細胞から老廃物を集めて、
リンパ管を通して運搬する役目を果たしているんです。

 

リンパ節とは、リンパの管が集まるところを指しています。
わきの下にはこのリンパ節がいくつもあり、長い間、
乳がんはこのリンパ節を通じて全身に転移すると考えられていました。

 

そのため、このリンパ節を全てごっそり取り除くことで
全身への転移を予防しようという治療法が主流だったのです。
ちょっとざっくりとした説明ですが、それがリンパ節の「郭清」です。

 

乳がん治療の歴史の中では、
胸骨や鎖骨あたりのリンパ節まで郭清していた時代もあったようです。

郭清したリンパ節から分かること

リンパ節郭清には、乳がんのがん細胞が全身に転移するのを防ぐ役割があります。

 

と、同時に、切除したリンパ節のうち
何個にがんが転移しているかを調べることも可能。
この結果を踏まえて、
「術後に抗がん剤治療もしましょう」
「放射線治療もやっておきましょう」
と新たな治療方針を立てることができます。

 

…ここまで読んだみなさんはお気づきかもしれませんが、
リンパ節を郭清したとしても、
すでに全身にがんが散らばっている場合にはあまり意味がありません。
リンパ節を郭清しても、転移を完全に防ぐことはできないのです。

 

実際、郭清してもしなくても、乳がんの遠隔転移の割合や生存率は
変わらないことが明らかとなっています。

 

しかも、リンパ節郭清した場合には、
腕がむくんだり上がりにくかったり、疼痛が出たりといった
後遺症が残ってしまうのです。

 

こうした流れから、
「乳がんでリンパ節郭清をする意味があるのか?」
という疑問が生まれ、この治療法そのものに対する見直しが始まりました。

 

その結果として考案されたのが
乳がんの「センチネルリンパ節生検」です。

センチネルリンパ節生検とは

乳がん,リンパ節

リンパ節郭清が乳がん治療の主流だった頃は、
リンパ節を何十個も摘出して、その中から何個に転移が見つかるか…
という検査が行われていました。

 

ところが、近年、発生場所から離れたがん細胞が
リンパ液に乗って最初に流れ着くリンパ節は1〜数個に限られることが
明らかになったのです。

 

このリンパ節を特定し⇒それを摘出して調べ⇒そこに転移がなければ、
そこから先のリンパ節には流れていないと考えることができます。
これが、センチネルリンパ節生検の基本的な考え方です。

 

※ちなみに、センチネルとは「見張り」といった意味です。


センチネルリンパ節生検の方法

通常は、乳がんの手術と同時に行われます。
(センチネルリンパ節生検だけを外来や短期入院で行う場合もあります) 
@ラジオアイソトープ(放射性医薬品)と、
青い色素を乳がんの病巣近くに注射します。

 

 

Aこの色素の動きを、ガンマプロープという探知機で追跡します。

 

 

Bリンパの流れを追跡し、センチネルリンパ節の場所が確認できたら、
その真上の皮膚を2〜3cm切開します。

 

 

C青く染まっているセンチネルリンパ節を摘出します。

 

 

D顕微鏡で検査します。

 


E転移がなければ、そのまま傷口を縫合。
転移があった場合は、通常のリンパ節郭清を行います。

 

 

場合によっては、センチネルリンパ節が見つからないことがあります。
見つからない場合は通常のリンパ節郭清を行うのが一般的です。
また、手術後の最終的な病理診断で検査結果がくつがえることがあります。
この場合は、改めて通常のリンパ節郭清を行うか、
放射線を照射して様子を見るなどします。