乳がんの教科書

乳製品が悪いとは限らない

「日本人の乳がんが増えているのは、乳製品の摂取量が多くなったから」
…って聞いたことはありませんか?
健康雑誌やヘルス関連のWebサイトでたまに目にするのですが…。

 

実際のところ、乳がんと乳製品の関係はどうなっているのでしょうか。

 

答えを先に言ってしまうと、どうやら、乳がんのリスクと
乳製品の関係についてはハッキリ分かっていないというのが実情のよう。
ただ、乳製品を多く摂取している国では乳がんの発生率が高いため、
「乳製品と乳がんの発生率には因果関係があるのではないか」
と言われているんです。

 

ここでよく考えて欲しいのは、
乳製品をよく摂取する国はその点以外にも日本と異なる点があるということ。
例えば、魚よりも肉を食べる文化の国が多いのでカロリーの摂取量も多いですし、
肥満が多く、子供の数が少ないのも特徴的です。

 

乳がんは女性ホルモンとの関連が非常に強いため、
出産経験や高齢出産なども乳がんのリスクファクターになり得るのです。

 

したがって、
「乳製品の摂取量が多いから乳がんになる」と断定することはできません。

 

ただ、
「もしかしたら乳製品の摂取と乳がんの発症とは関係があるのかもしれない」
という可能性があることは否定できません。

例えば、こんな研究結果も…

乳がんと乳製品の関係については様々な研究者が研究や調査を進めているようです。

 

例えば、 1999年にサイエンス雑誌『キャンサー』で発表された論文。
この研究結果によると、
「脂肪分の少ない食事を摂っても、乳がんの再発にはあまり関係がない」
ということが明らかになっています。

 

その一方で、乳製品に含まれている
「乳糖」を分解する酵素の無い人が乳製品を摂りすぎると、乳がんになり易い
という説も発表されています。

 

加えて、乳がんの発症には乳製品よりも
アルコール摂取のほうが問題だとする研究結果もあります。

 

いずれにしても、
「乳製品を摂取しなければ乳がんを避けられる」
と断言できるほど単純なものではないことだけは確か。

 

一部の雑誌やネット商材のマニュアルなどでは、
「乳がんに乳製品は絶対にダメ!」と、
かなり強い口調で説かれいうものもありますが、
あまり神経質になり過ぎるのも考えもののようです。

乳がんと乳製品の関係を検証せよ

乳製品は乳がんを発症される原因になる。
…この説の根拠としてよく挙げられるのが次の4つ。
しかし、それぞれ矛盾している点もあります。

 

●妊娠牛からも採取しているため、
女性ホルモンである「エストロゲン」が大量に含まれている

 

毎日500mlの牛乳を飲むとすると、
1日に経口摂取するエストロゲンの量は最高で約0.5μgになるそうです。
この一部が吸収されることにより、血中のエストロゲン濃度が上げるというわけ。
しかし、この量が果たしてそれほど多いといえるのかどうかは
議論が分かれるところです。
ちなみに、更年期障害の治療に用いる場合の経口ホルモン剤に含まれる
エストロゲンの量は、1日投与量あたり800μg以上。
これと比べると、比較にならないくらい微量ですよね…。

 

 

●日本では、乳製品を積極的に摂取するようになった年代
(1960年以降生まれ)から乳がんが増え始めた

 

確かに、この年代から日本人の乳製品の摂取量が増え始めたのは事実。
しかし、同時に、食生活や生活習慣の欧米化が進んだのもこの時期なんです。
例えば、魚よりも肉を好んで食べるようになったことや、
結婚年齢の高齢化、少子化、キャリアウーマンの増加、
運動不足、食品添加物の増加…等々)。
つまり、乳製品だけが原因だと言いきってしまうのは、ちょっと乱暴です。

 

 

●牛乳を多く摂取している地域は乳がんが多い

 

これは様々なメディアでもっともらしく述べられている説ですね。
しかし、実際のところは、
調査の仕方によってまるで逆の結果が出ているケースもあります。
「この地域では…」といった疫学的な調査は長期間にわたる追跡が必要。
また、そこに住む人が何年も同じような食生活を続けるとも限りません。
経済の動向によって物の流通にも変化が出てきますし、
Aという地域だけが常に新鮮な牛乳を確保し続けられる保証はどこにもないのです。