乳がんの教科書

かつての乳がん手術は…

「乳がんになっても、絶対に乳房は失いたくない!」

 

…そんな強い意思をお持ちの女性も多いことでしょう。
バストは、女性のアイデンティティーを支えているものの一つ。
乳房の手術や乳房を失うことに対して強い拒絶感を持つのは
当然のことだと思います。

 

しかし、医療の発達に伴って、
乳がんの手術技術も日進月歩で進化しています。

 

かつて、乳がんの手術といえば、
乳房周辺(わきを含む)のリンパ節を含めて
広く切除する方法が一般的でした。

 

しかし、徐々に、手術によって切除する範囲を狭めても
治療効果があまり変わらないことが分かってきたのです。
そのため、現在では、
必要以上に広い範囲を切除する方法は採用されません。

 

その代わりと言ってはなんですが、
手術と抗がん剤、ホルモン療法、放射線治療等を組み合わせた治療法が
用いられるようになっているのです。
これには、他に転移したがん細胞の成長を阻止するという意味があります。

 

手術はいわば局所療法であるため、
発生した乳がんの病巣そのものを摘出することはできますが、
他の組織にちらばってしまった細胞を除去することまではできません。
そのため、乳がん手術単独では、がんを根治したとは言い難いのです。

 

そこで登場するのが、前述したような「全身療法」
これにより、手術によっては取りきることができないがん細胞を
死滅させるというわけです。

 

状況によっては、抗がん剤や放射線でがん細胞を小さくしてから
手術を行う場合もありますし、
手術後に「再発予防」の意味を込めて全身治療を行う場合もあります。

「リンパ節郭清」って何?

乳がん,手術

手術をすることになった場合、よく聞かれるのが
「リンパ節清」という言葉です。

 

リンパ節とは、リンパ管とリンパ管の中継地点のようなもの。
体内各所に流れるリンパ液が集まってくる場所です。
リンパ液の中を流れている異物や細菌などをせき止め、濾過するのです。

 

乳がんはわきの下のリンパ節に転移している可能性が高いため、
手術の際にこのリンパ節を全て除去してしまうケースがあります。
これが、リンパ節郭清です。

 

しかし、リンパ節郭清には、
術後の「むくみ」や「運動障害」などの後遺症が残ることがあります。

 

そこで、最近では、「センチネルリンパ節生検」と呼ばれる
検査を行うのが主流になっています。
これは、主に乳がんの手術の最中に行われるもの。
センチネルリンパ節とは、
「がん細胞がリンパ流に乗って最初に到達するリンパ節」のことです。

 

乳がんの近くにラジオアイソトープか色素を局所注射し、
それらの移動経路を確認することで(それらが目印となって)
センチネルリンパ節を見つけることができます。

 

そして、このセンチネルリンパ節を切除・採取し、
顕微鏡で検査を行うことによって、
そこに転移があるかどうかを確認するのです。

 

この時点で、転移があるようならリンパ節郭清を行いますし、
ないようであれば行わないというのが一般的です。


乳がん手術法

一言で「乳がんの手術」と言っても、様々な方法があります。

 

乳がんの手術は、大きく分けて、
乳房を切除する「乳房切除法」と、
乳房を残す「乳房温存法」があり、
具体的には次のような方法で行われます。

 

 

【乳房切除術】

 

・単純乳房切除術
 大胸筋と小胸筋を残し、センチネルリンパ節生検を行います。

 

・オーチンクロス手術
 最も標準的な方法。
 大胸筋と小胸筋を残し、リンパ節はレベル2(ワキの下〜鎖骨の間部分)
 までを郭清の範囲とします。

 

・ペイティー手術
 大胸筋を残し、小胸筋は切除します。リンパ節はレベル3(鎖骨まで)
 までが郭清の範囲になります。

 

・ハルステッド手術
 大胸筋と小胸筋の両方を切除し、腋窩リンパ節郭清も行います。
 かつて、最も多く用いられた手術法です。

 

 

【乳房温存手術】
かつてはハルステッド手術が主流でしたが、
現在ではおよそ半数程度の症例が、この乳房温存手術です。

 

・乳房扇状部分切除術
 乳頭を中心に、しこりとその周囲の乳腺組織を扇形に切除する方法。
 しこりが大きく、取り残しがある場合には、
 放射線治療と組み合わせて治療するケースが多いようです。

 

・乳房円状部分切除術
 しこりと周囲の正常な乳腺組織を丸く切除します。
 切除範囲が狭いため、変形は少ないものの、
 癌細胞が取りきれないというリスクがあります。
 通常は放射線治療を併用するようです。

 

・腫瘍核出術
 しこりだけを切除する方法です。
 がん細胞を取り残す可能性がとても高いため、
 一般的にはあまり行われていません。

 

 

【乳房再建術】
本人の筋肉やシリコンを使って、乳房の形を再建する手術です。
乳がんの手術の際に行う一期的再建術と、
手術後に時間をおいてから行う二期的再建術の2つがあります。

 

体験者の手記などを読むと、「これが再建って言えるの?」と思うような
いびつな形になってしまったり、最初は形が崩れやすかったりと、
色々と問題点もあるよう。

 

女性として、かえって精神的なショックを
大きくしてしまうケースもあるようですので、専門医と相談の上、
納得してから手術に踏み切ることをオススメします。