乳がんの教科書

乳がん治療の歴史

今でこそ、病期に合わせて様々な治療法を選択できるようになった
乳がんですが、かつては手術が主流でした。
とにかく、悪いところを切って除去してしまえ!という治療法だったのです。

 

では、そもそも日本における乳がん手術は
いつ頃から行われるようになったのでしょうか。

 

さかのぼること、1805年、今から約200年前ですが、
花岡青洲という人がが麻酔薬を用いて乳がん手術を行ったのが
始まりと言われています。

 

テレビドラマ『JIN』をご覧になっていた人は
だいたいの雰囲気がイメージできるのではないでしょうか?

 

当時は、「胸に“岩(いわ)”がある」という表現を使っていたようですね。

 

現在では、乳がんだからといってすぐに手術をするとは限りません。
各治療法については各項で細かく見て行きますので、
まずはざっくりと乳がん治療全体を概観してみたいと思います。

【治療法1 外科手術】

●腫瘍核出術
しこりだけをくり抜くように切除する手術法です。
本来は、がんの治療法というよりも「診断」を目的として行われるもの。
乳がんが強く疑われる場合には、がんから約1cm外側を切除します。

 

 

●乳房部分切除
前述の腫瘍核出術からもう少し範囲を広げ、しこりを中心に
周囲2cmの範囲にある正常乳腺も含めて切除する手術法です。
扇状に広がるひとつの乳管系を切除する「乳房扇状部分切除術」も
これに含まれます。 

 

 

●乳房単純切除術
上の2つが、いわゆる「温存手術」と呼ばれる治療法であるのに対して、
この手術では乳房は全部切除します。
ただし、筋肉、リンパ節は温存します。

 

 

●胸筋温存乳房切除術
大胸筋だけを残す「ペイティー手術」と、
大胸筋&小胸筋共に残す「オーチンクロス手術」の2つがあります。

 

 

●ハルステッド手術
乳房、筋肉、腋窩(わきの下のこと)のリンパ節を全て切除する治療法です。
1900年代初頭から長い間、この治療法が標準治療とされてきました。
疑わしいものは全て切除するという考えの元に行われる手術法です。

 

なぜリンパ節まで切除するのかというと、
乳がんはリンパ節を経由して全身に広がると考えられていたためです。

 

ただ、この手術は、術後の傷跡が目立つってしまったり、
わきの下のリンパ節を切除するために腕がむくんだり、
感覚が鈍くなったりという後遺症に悩まされることも少なくなかったようです。

手術以外の治療法

●術前化学療法
2期の少し大きめのがんや、3期のがんに対して、
手術前に抗がん剤を用いた治療を行って、
がんを縮小させてから乳房温存療法を施こすという治療法です。

 

 

●センチネルリンパ節生検
乳がんが転移する場合、がんの病巣から
がん細胞が最初に流れ着くリンパ節があるということが分かりました。
これが、センチネルリンパ節と呼ばれるものです。
そのリンパ節を調べて、そこに転移がなければ
それより先のリンパ節にも転移はないと考えます。
この方法により、リンパ節郭清は行わなくて済むことになります。

 

 

●放射線療法
乳がんは放射線治療の効果が高いと言われています。
乳がんは、胃や大腸と同様に「腺がん」と呼ばれるがん。
腺がんは放射線が効きにくいといわれていますので、
乳がんは珍しいケースです。

 

この放射線治療は、一般的に
術後の再発をを防ぐ目的で行われるようです。
(手術できない進行性の乳がんや、
遠隔部に転移した乳がんに対する治療法としても使われます)

 

 

●化学療法
化学療法とは、抗がん剤を使った治療と、
ホルモン剤を使った治療があります(それぞれ、詳しくは別項で)。

 

抗がん剤といえば、「副作用がつらい」というイメージが強いと思いますが、
最近は副作用の吐き気を抑える薬も進歩しています。

 

ホルモン療法は、乳がんが女性ホルモンという“餌”なしには
増殖できない性質を持っていることに着目して行われる治療法です。
女性ホルモンの供給を阻害し、がん細胞の増殖を抑える治療法です。

 

 

●分子標的治療薬
これは、分子レベルでがん細胞を狙い撃ちするという新しい治療法。
トラスツズマヅ(商品名ハーセプチン)という治療法が有名です。