乳がんの教科書

放射線治療の目的は?

がん細胞は、正常細胞よりも放射線の影響を受けやすいことが分かっています。
この性質を利用して、高エネルギーのX線を照射することによって
がん細胞のDNAを切断し、損傷させるのが放射線治療の目的です。

「関係のない細胞まで傷つけてしまうのでは…」
と不安に思う方が多いと思いますが、量や範囲を的確に設定すれば、
正常な細胞を傷つけずにがん細胞だけを殺すことが可能です。
その点では、局所治療である手術と同じといえます。

また、一般に、鼻・口・のどなどに発生する
「扁平上皮がん」には放射線が効きやすく、
胃や腸に発生する「腺がん」は放射線が効きにくいと言われています。

乳がんは、多くは「腺がん」に分類されますが、腺がんの中では
最も放射線が効きやすいタイプのがんであることが分かっています。

乳がんに用いられる放射線治療は、
電気を使った「リニアック」という方法と、
放射性同位元素を用いる「コバルト照射装置」があります。
1日に1回ずつ、合計25回行うのが一般的で、
手術やホルモン療法、抗がん剤といった他の治療法と
併用して行われることが多いようです。

※扁平上皮がんと腺がんとは?
扁平上皮がん :皮膚や粘膜に発生する
腺がん:内臓の分泌物を出す上皮に発生する
未分化がん:原発巣がわからないがん(主に、肺。最も悪性)

放射線治療はどんな場合に行われるの?

乳がん治療で放射線が使われるのは、主に次のようなケースです。

 

■乳房温存手術の後
一般的に、乳がんの乳房温存療法(乳房を残した手術)と放射線治療は
セットで行われます。
乳がんの手術後、「放射線治療をしたグループ」と
「しないグループ」の乳房内再発率を比較した結果、
照射しなかったほうは35%、照射したほうは10%で、
放射線治療が再発率を大幅に下げていることが明らかとなったのです。
(←これはアメリカの調査結果)

 

このことから、乳房温存手術は、がん細胞が残ることを
ある程度は覚悟の上での治療法であることが分かります。

 

 

■乳房切除術の後
乳がんの場合、乳房を全部切除したとしても20〜30%の人には
局所的な再発が起こると言われています。
ところが、放射線治療を組み合わせることによって
再発率を約3分の1にまで減らすことができるのだとか!
温存手術に比べると、全摘手術をした方の多くは
放射線治療を受けないケースが多いようですが、
安全を期すなら受けておくのがベターです。

 

特に、リンパ節への転移が4個以上あったり、
しこりが5cm以上である場合には、
「局所再発のハイリスクグループ」と分類されるため、
放射線治療を受ける必要があります。

 

 

■手術不能な「進行乳がん」の術前治療
術前化学療法(抗がん剤やホルモン剤)の効果が無効である場合、
放射線治療を行ってしこりを縮小させてから手術を行うことが多いようです。

 

 

■再発・転移性乳がん治療
たとえば、乳がんが骨に転移した場合、
骨折したり痛みが出たりすることがあります。

 

放射線治療を行うことで、骨折を予防したり、
痛みを緩和したりすることが可能です。

 

また、脳に転移した場合にも、がんに的を絞って放射線を照射することで
頭痛や吐き気などの症状を緩和することができます。
「ガンマナイフ」と呼ばれています)

放射線治療の副作用

「放射線」という言葉の響きだけを聞くと、

 

「副作用がひどいのでは」「受けるのが怖い」

 

といった負のイメージばかりが先行してしまうかもしれません。

 

しかし、実際は、手術や化学療法に比べれば副作用も少なく、
放射線が照射された部分にしか影響は現れません。
それも、大部分は3〜6ヵ月後には消えてしまう程度のものです。
(抗がん剤の味覚障害などは、治療を止めた後でも長く残る場合があります)

 

放射線治療による副作用には、
照射中や照射終了後に出る「急性障害」と、
数ヶ月〜数年経過してから出る「晩期障害」の2つがあります。

 

★急性障害
日焼けしたときのように皮膚が赤くなったり、
皮膚がカサカサしてかゆくなったり、
ジュクジュクして水ぶくれができたりします。
いずれも時間が経てば、改善します。

 

 

★晩期障害
適切な照射計画を立てれば、重篤な晩期障害が残ることはまれです。
おもな障害としては、皮膚の萎縮や毛細血管の拡張、
皮下組織や乳腺の硬化、乳腺の委縮などがあります。