乳がんの教科書

乳房温存療法と再建手術

乳がんで、乳房を全て切除する「全摘手術」を受けた人はもちろんのこと、
乳房の一部だけを切除する「温存手術」を受けた患者さんの中にも、
「乳房の変形が気になる」
「再建手術を受けたい」
と希望する方が多いようです。

 

しかし、現在の日本では、
再建手術はあくまでも患者さんの希望のもとに行われる手術。
残念ながら、保険が適用されない場合も多いようです。

 

また、再建手術を受ける際には、
医師と相談の上で決めなければならないことが数多くあります。

再建手術の方法

乳がんの乳房再建手術の方法には、大きく分けると2つあります。

 

一つ目は、人工物を挿入する方法。
そしてもう一つは、自分の組織を移植する方法です。

 

 

●人工物を挿入する方法 
この方法は、比較的切除範囲が狭く、
自分の組織(皮膚や筋肉)が十分残っている場合に適用されます。

 

使用される人工物は、主に「シリコン」です。
正式には、「ソフトコヒーシプシリコン」というもの。
これは日本ではまだ認可されていないものなので、
個人輸入する形となります。
具体的には…

 

@反対側の乳房につりあう大きさまで皮膚を伸ばします。

 

 

A乳がん手術の傷跡を切開して風船状の袋をしぼんだ状態で挿入します。

 

 

Bそこに生理食塩水を注入します。

 

 

C2週間ほど期間を空けて、また注入します。
こうして少しずつ皮膚を伸ばしていきます。

 

 

D袋ををはずしても皮膚が後戻りしない状態になったら、
袋とシリコンを入れ替えます。

 

 

●自分の組織を使用する方法
背中の筋肉を使う「後背筋皮弁法」と、
下腹部の筋肉を使う「腹直筋皮弁法」があります。

 

★「後背筋皮弁法」
残っている皮膚が足りず、
人工物を挿入して乳房を再建することが難しい場合に行われます。
また、放射線の照射で皮膚が硬くなって伸びない場合にも
この方法が採用されます。

 

具体的には背中の皮膚、脂肪、筋肉を乳房の欠損した部分に移植します。
手術の所要時間は数時間。
1週間〜10日前後の入院が必要です。

 

 

★「腹直筋皮弁法」
後背筋皮弁法と同様、
人工物を入れることができないケースに行われます。
腹直筋(下腹部の筋肉)の一部を使用して行われる手術法で、
再建手術の中ではもっとも負担が大きい手術と言われています。

 

ただし、再建後の乳房は感触も柔らかく自然です。
入院は最低でも2週間かかります。

 

【補足】
人工物を挿入した場合には、
被膜拘縮(ひまくこうしゅく)という合併症が起こるリスクがあります。
人工物に対する自己防衛反応として、
挿入したシリコンのまわりに被膜が形成されるのです。
これが硬くなると、カプセルのようになってしまいます。

 

これを防ぐ意味でも、術後はマッサージが必要不可欠です。

 

また、自分の組織を使った再建手術であっても、
移植した組織が壊死してしまう場合もあります。
再建手術にはこういった合併症に関する知識・覚悟も必要です。

 

再建手術の時期

乳がんの乳房再建手術には、
「いつ再建手術を受けるか」という問題もあります。

 

乳がんの再建手術には、乳がん手術と同時に行う「1期再建」と、
乳がん手術後、時期をおいて再建する「2期再建」の2つがあります。

 

 

●1期再建 
手術が1回で済み、傷跡を再度切り開く必要はありませんが、
費用の面ではマイナス面もあります。
再建手術は保険が効かないたけに自由診療扱いになることが多く、
乳がんの手術までが自己負担になってしまうケースもあります。

 

 

●2期再建
2度手術を受けなければならないというデメリットはありますが、
乳房切除後に色々と考えた上での手術なので、
「こんなハズではなかった」「やめておけばよかった」
と後悔することも少ないようです。

 

乳頭・乳輪の再建はどうする?

乳頭、乳輪の再建については、
乳房の再建が終わってから数ヵ月後に行うのが一般的。
健康な側の乳頭の一部を移植したり、
乳頭にあたる部分の皮膚を立体的に盛り上げて作ったりなどの方法があります。

 

また、乳輪は反対側の乳輪からの植皮や刺青などの方法でつくります。
この方法なら、仕上がりの色も自然です。

 

ちなみに、反対側の乳頭・乳輪の半分を移植するという一般的な方法であれば、
健康保険が適用されるので負担は少ないようです。