乳がんの教科書

更年期障害と乳がんの関係

女性にとって頭の痛い問題である「更年期障害」
年齢と共に女性ホルモンが減少することによって起こる症状であることは
みなさんもご存知のことでしょう。

 

それはつまり、女性ホルモンを補充すれば
更年期障害の症状を緩和できるということですよね。

 

ところが、女性ホルモンの補充によって乳がんにかかりやすくなる
という研究結果があるんです。 
でも、一体なぜそんなことになってしまうのでしょうか?

 

実は、乳がんと女性ホルモンの間には非常に密接な関係があるのです。

ホルモンの作用機序

ホルモンが作用する器官を、「標的器官」といいますが、
特定の標的器官を持つホルモンもあれば、
全身に標的器官を持つホルモンもあります。
標的器官は、そのホルモンとのみ結合し合うことのできる
「受容体(レセプター)」を持っていますので、
血液に乗って全身をまわるホルモンは標的器官にのみ作用します。

 

この関係は、生物の教科書などでは「鍵と鍵穴の関係」に例えられます。

 

乳がん細胞の約60%は女性ホルモンである
「エストロゲン」の受容体を持っているため、
両者が合体することによって細胞分裂が活発になってしまいます。

 

つまり、女性ホルモンを補充するということは
がんの増殖を助長しているようものと言っても過言ではないのです。

ホルモン療法とは

女性ホルモンの分泌を低下させることができれば、
乳がんの増殖を抑えることができます。
これが「ホルモン療法」のごく基本的な原理です。

 

この療法を採用するには、まず、
その乳がんがホルモン受容体を持っているタイプかどうかを
確認する必要があります。
これは、手術で切り取ったがん細胞を調べればわかります。

 

女性ホルモンへの受容体がある場合は、
さらに次の2つのタイプに分類されます。

 

●エストロゲン受容体(ER)があるタイプ
●プロゲステロン受容体(PR)があるタイプ

ホルモン療法の実際

乳がんのホルモン療法では、一般的に次のような薬が使われます。

 

●抗エストロゲン剤
エストロゲロン受容体があるタイプの乳がん治療に用います。
簡単に言うと、エストロゲンよりも先に受容体と合体して
エストロゲンが受容体と合体できないようにする薬です。
これにより、乳がん細胞はそれ以上増殖できなくなります。

 

 

●LH−RHアゴニスト製剤
エストロゲンは、卵巣でつくられるホルモンです。
しかし、もともとその指令を出しているのは脳の視床下部。
そこから脳下垂体へ指令が出され、
次に脳下垂体が性腺刺激ホルモンを出して、
卵巣に「エストロゲンを出しなさい」と伝えるのです。

 

この製剤は、脳下垂体に作用することで
性腺刺激ホルモンを出さないように働きかけるものです。
これにより、必然的にエストロゲンの分泌も低下します。

 

 

●アロマターゼ阻害剤
 閉経すると、女性ホルモンであるエストロゲンは
次のようなメカニズムで合成されるようになります。

 

副腎から男性ホルモン(アンドロゲン)が分泌される

アロマターゼという酵素が働く

女性ホルモンに変換される

 

アロマターゼ阻害剤は、アロマターゼの働きを妨げることによって
女性ホルモンの合成を阻害し、乳がんの発生を予防します。

 

 

 

ホルモン療法は、ホルモンバランスに異常をきたす可能性の高い治療法です。
のぼせやむくみ、月経異常、吐き気、子宮出血…と、
体に変調を感じることもしばしば。
異常が出た場合は、我慢せずに必ず主治医に報告しましょう。