乳がんの教科書

乳がんは他人事ではない

現在、女性の20人に1人が乳がんに罹患すると言われています。
みなさんの身近でも、乳がんを患っている方/患ったことがあるという方が
いらっしゃるのではないでしょうか。
もちろん、ご自身が乳がんと闘っているという方も…。

 

筆者の家系では、母と伯母とが相次いで乳がんに罹患しました。

 

最初に発症したのは、伯母でした。
その時は、筆者はまだ高校生だったので、
事の重大さがイマイチ分かっていませんでした。
それでも、「がん=不治の病」といった漠然としたイメージはありましたから、
伯母はどうなってしまうんだとうと不安になったものです。

 

当時は今ほど乳房温存手術の技術が確立されていなかったため、
伯母はしこりが1cm程度でしたが全摘出に踏み切りました。
元来、明るく陽気な性格の伯母は、
術後も何事もなかったかのように明るく振る舞っていましたが…。

 

その数年前に旦那を肺がんで亡くしていたことを考えると、
メンタル面でのショックはかなり大きかったハズです。

 

その後、数年後に大腸にもがんが見つかって再手術。
今ではすっかり元気になって庭仕事などに精を出している伯母ですが、
やはりメンタル面では真夜中にひどく不安になることがあるそうで、
嫁入りした娘に電話をしたり家に来てもらったりしているようです。

 

そんな話を聞くにつけ、「乳がんは他人事ではないんだ」と、
手の平に汗がにじみ出るような感覚を味わったのを覚えています。

 

そして、2010年、今度は母が乳がんであることが分かったんです。

乳がん患者のメンタルケア

50代のはじめに、長年務めた会社を退職した母。
ここ数年は、近所のホテルでアルバイトをしたり、
押し花や習字のお稽古に通ったり…と、
第二の人生を楽しんでいるように見えました。
娘としては、そんな母を温かく見守ってあげたいなと思っていたのです。

 

ところが、退職して依頼、乳がんの検査をしていなかったようで。
「胸に違和感がある」と病院を受診した時には、
すでに病巣が4cmにも達していたのです。

 

本人が言うには、近所の総合病院が改築した頃、
「あの建物を見ると、なんだか嫌な気持ちになって、
どうしても脚が向かなかった」…のだとか。

 

これを聞いた時、お恥ずかしながら、
筆者は母を責めてしまいそうになりました。

 

でも、病気になった人を責めてももうどうにもなりませんし、
病気になってしまったのは母の責任でもありません。
娘である自分が、肉体的な意味でも
メンタル面でも母をサポートしていかなくては…。
そう思えるようになるまで、
ちょっと時間がかかってしまったのを覚えています。

 

告知されてから手術までは1ヵ月近くあり、
「こんなに待たされるなんて」「さっさと切ってしまいたいのに」
と、母はメンタル面で非常に焦りを感じていたようでした。

 

まあ、胸に悪いものがあって、
それが他の場所に転移してしまう可能性があるわけですから、
メンタル面で不安定になってしまうのは無理もありません。

 

そんな時は、あえてそれを否定せずに
「もうすぐだよ」「ほんとだよね、ずいぶん待たされるよね」
となるべく同調してあげるようにしていました。

 

自分の身体の一部ががん細胞によって蝕まれているという感覚や、
それを自分ではどうすることもできないというもどかしさは、
乳がんを罹患した人でなければ本当の意味では分からないと思います。

 

これは筆者の経験から感じたことですが、
近くでサポートをする方は、無責任な言葉で励ましたり
根拠もなく「大丈夫だよ」と励ましたりするのではなく、
いつでも不安を聞いてあげられるようにそっと近くに寄り添ってあげることが
メンタル面での支えになるのではないかと思います。

手術後のメンタルケア

筆者の母もそうでしたし、
ネットの体験談などを見てもそのような記述がありますが、
乳がんの場合は「大丈夫?」とか「がんばって」とか
同情されるような言葉がかえってメンタル面でのストレスになるようです。

 

乳がんは内臓の疾患とは違って、
食べられなくなったり動けなくなったりするわけではありません。
手術をしても翌日には普通に歩けますし、食事も普通に食べられます。
なにより、医師から、
「寝てなくても良いんですよ。
どんどん動いて、自分のことを自分でやることがリハビリになるんです」
と指導されますので。

 

家族や周りの人に必要以上に気遣われると、
「重病人みたいでますます落ち込む」ということでした。

 

また、抗がん剤で髪が抜けた姿を
憐れんで見られるのも嫌だということだったので、
筆者の場合は髪の毛のことには触れずに
「頭の形がキレイだね」といった具合に
気持ちをプラスの方向に持っていけるような言葉をかけていました。

 

ただ、乳がんの術後は重いものが持てなかったり、
手が挙がらなかったりします。
そういった面をさりげなくサポートしてもらえると、
それが結果的にメンタルサポートにもつながるようですね。

 

また、病院によっては、
乳がんの手術をしたり転移が見つかった人たちを対象にした
独自のメンタルサポートプログラムを設置しているところもあります。

 

そういったプログラムがない場合でも、医師や看護師に相談すれば、
カウンセラーによるメンタル面でのケアを受けられるところもあるようです。

 

母も、抗がん剤の影響で味覚が麻痺して
メンタル面でうつっぽくなった時期がありましたが、
病院の看護師さんにじっくり話を聞いてもらったら
気持ちが楽になったと言っていました。

 

患者会としても、
「イデアフォー」「あけぼの会」「ソレイユ」
などがあり、患者同士のメンタルサポートが活発に行われているようです。