乳がんの教科書

術後療法の目的とは?

乳がんを発症した場合、そのほとんどのケースは、
胸にあるしこり=腫瘍を取り除く手術を受けます。

 

しかし、それで治療がおしまいかといえば、
決してそうではないのが“がん”という病気の厄介なところ。
腫瘍を除去したところで、
まだ身体の中にがん細胞が残っている可能性は否定できません。
そのがん細胞が増殖すれば、遠隔再発(転移)の可能性もあるのです。

 

術後療法は、このリスクを少しでも少なくするために行われる治療。
主に、ホルモン剤や抗ガン剤を使った治療がメインとなります。

 

術後療法を受けるか・受けないかは
病気の進行状況にもよりますし、その人の考え方に委ねられる部分もあります。
しかし、ホルモン剤や化学療法を行った人の方が行わなかった人よりも
再発率や生存率の結果が良かったというデータもありますので、
医師としては「術後療法を勧めたい」というのが本音のようですね。

 

(少なくとも、筆者の母の場合はそのようなニュアンスを感じました。
転移の可能性は低かったので、
やらなければやらなくても良かったのですが…)

 

乳がん治療に使用される薬剤一覧表
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治療方針はどのようにして決めるのか?

術後療法を勧めるのか、勧めないのか。
また、実施するとしたらどのような治療を行うのか。
その治療方針を決める上で、医師は様々な項目を考慮する必要があります。

 

例えば、ホルモンレセプターHER2(ハーツー)の発現状態。
その乳がんがホルモン受容体を持っているタイプであれば、
女性ホルモンの作用を妨げるホルモン剤を投与することで
がん細胞が増えるのを抑えることができます。

 

また、HER2は、細胞の増殖調節機能を担うたんぱく質で、
過剰に発現していると細胞の増殖や悪性化に関わると言われています。
このHER2が過剰に存在している場合は、再発の危険性が高くなる
といわれています。

 

治療法としては、「分子標的治療薬」が有効で、
特定のタンパク質(この場合はHER2)を集中的に攻撃し、
がん細胞の増殖を抑えることができます。

 

HER2陽性乳がんの治療薬としては、
ハーセプチンR(トラスツズマブ)が有名です。
こうした因子の他、患者の年齢や腫瘍の大きさ、
転移の状態、がん細胞の“顔つき”(細胞の分化度)などを考慮して、
その患者にとって最善の術後療法を提示するのです。

 

ちなみに、医師の判断のベースには、
「日本乳癌学会ガイドライン」があります。

 

興味がある方、乳がんについて徹底的に知りたいという方は
入手してみると良いでしょう。

術後療法を受ける上での心構え

筆者の母の場合は、ホルモンレセプターが陰性、
しかもHER2の発現もないタイプの乳がんでしたので、
ホルモン療法は使うことができませんでした。

 

そのため、術後療法としては、
抗がん剤を使用する「化学療法」を選択することになったのです。

 

基本的には、ホルモンレセプター陽性の場合はホルモン療法、
ホルモンレセプター陰性の場合は化学療法を選択することになります。
(ケースによっては両方を行う場合もあります)

 

母の姉(伯母)はホルモン療法を受け、薬は5年間服用しました。
一方、母は、3週間に1度の抗がん剤を約半年。
いずれにしても、術後療法では
長期間にわたってなんらかの薬剤と付き合うことになります。
薬剤の特徴については、事前に主治医によく確認し、
納得できない部分をクリアにしてから治療に望みましょう。
(特に副作用については事前によく確認しましょう)

 

ホルモン剤にしても、抗がん剤にしても、
普段は付き合うことのない特殊な薬です。
思わぬ症状が次々と表れて戸惑うことも多いと思いますが、
身体に異常が生じた場合は一人で悩まないことです。

 

まともな医師であれば、主治医は患者の質問に対しては
真摯に応えてくれるはずですし、がん患者のメンタルサポートを
充実させている病院も増えています。

 

乳がんがきっかけでメンタル面まで病んでしまった…
などということがないように!