乳がんの教科書

乳がん手術と“むくみ”

乳がんの手術後に、腕に“むくみ”が出る場合があります。
これは、専門的には「リンパ浮腫」と呼ばれる症状で、
見た目が悪いだけではなく
腕を思うように動かせなかったり…と、本人にとっては辛い後遺症です。

 

筆者の母親のように、
転移を予防するために脇の下のリンパ節を切除した場合や、
放射線照射をした場合など、約1〜3割の人にこの“むくみ”が表れるようです。

 

こうした後遺症を防ぐために、
リンパ節の郭清(取り除くこと)をしないという選択肢もあります。
今は、「センチネルリンパ節生検」という便利な検査があり、
手術の前にリンパ節を採取して転移の有無を調べることができます。
これで異常がなければ、リンパ節を取らないという選択もできるのです。

 

リンパ節郭清を免れるとリンパ浮腫が起こりにくくなると言われていますので、
辛い後遺症を残さないためにも、
乳がんの手術を検討される際には医師とよく話し合いましょう。

なぜ“むくみ”が出るのか?

そもそも、なぜ、乳がんの手術を受けると“むくみ”が出やすくなるのでしょう。
また、リンパ節を残すかどうかで症状が左右されてしまうのはなぜでしょうか。

 

乳がん手術が原因で起こる“むくみ”は、ごく簡単に言うと、
身体の中を流れているリンパ液の流れが滞って生じます。
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血液には、心臓から細胞へと栄養や酸素を運ぶ「動脈」と、
個々の細胞から不要物を回収して心臓に戻す「静脈」がありますが、
これに加えて、身体の組織にたまった余分な水分やタンパク質などを集めたり、
免疫細胞を運んだりする「リンパ管」という流れが存在しています。

 

そのリンパ管の節目節目で“関所”のような役目をしているのが、「リンパ節」。
このリンパ節が手術で遮断されてしまうと、
リンパ管の流れに通行障害が起き、
余分なリンパ液をスムーズに流すことができなくなってしまうのです。

 

特に、乳がんの手術で郭清される脇の下のリンパ節は、
あらゆる方向からリンパ液が流れ込んでくる“交通の要所”のようなもの。
ここが遮断されてしまうわけですから、当然、リンパ液の流れも悪くなります。

 

他の経路にうまく流れていければ“むくみ”は予防できますが、
それがうまくいかないと皮下組織に過剰に貯留するようになり、
結果として「リンパ浮腫」を引き起こしてしまうというわけです。

日常生活で“むくみ”を予防するケア

しかし、乳がん手術後の“むくみ”を恐れてリンパ節郭清をためらえば、
助かる命も助からなくなってしまうリスクもあります。
医師が「郭清しましょう」と言うのであれば、
素直に従ったほうが将来のためでしょう。

 

ご安心ください!
術後に、かならず“むくみ”が表れるとは限りません。
日頃の日常生活の中でしっかりケアしていけば、
乳がん手術後のむくみを予防することは可能です。

 

リンパ浮腫は一度発症してしまうと
完治させることは困難だと言われていますので、
毎日の生活の中で自分にできることをしっかり実践していきましょう。

 

むくみ予防法 具体例

むくみ予防法@ 身体を締め付けないこと
健常な人でもそうですが、身体を締め付け過ぎるとむくみやすくなります。
(夕方、靴下を脱ぐとなかなか跡が消えませんよね?)
リンパ液の流れを妨げないよう、衣類は楽なものを選びましょう。

 

むくみ予防法A ケガや日焼けを予防しましょう
皮膚の傷口から細菌が入ると、そこからリンパ管炎を発症することがあります。
これは、リンパ浮腫発症のきっかけになることがありますから、
ケガや虫刺され、日焼けなどは避けるように心がけましょう。

 

むくみ予防法B 過労を避けましょう
疲れが溜まると、身体の免疫力が低下してしまいます。
これはAにもつながることですが、細菌感染や炎症を起こしやすくなる元。
疲れをためないように、睡眠不足にはご注意ください。

 

むくみ予防法C 食事の塩分に気をつける
塩分が多い食事は、細胞内に水分を溜め込むことになり、
むくみの原因になります。
しょっぱい食べ物は控えましょう。

 

むくみ予防法D 腕を動かすように心がけましょう
むくみ予防には、適度な運動が必要です。
なぜなら、長時間動かずに同じ姿勢でいると、
リンパ液が溜まりやすくなるからです。
テレビを観ている時も、軽く腕を回したり、
腕を心臓より高い位置に上げたりして、
無理のない範囲で腕を動かすようにしましょう。
そうすることで、リンパ液の循環が促進されます。