乳がんの教科書

乳がんは骨に転移しやすい

乳がんには、「骨転移しやすい」という特徴があります。

 

一般的に、がんの転移には、
がん細胞が血液の流れに乗って他の臓器に転移する「血行性転移」と、
リンパ液の流れに乗ってリンパ節に転移する
「リンパ行性転移」がありますが、骨転移は前者に含まれます。

 

乳がんの骨転移は、手術後2、3年目に発生するケースが最も多いのですが、
5年、10年以上経過してから発症する例もあり、油断はできません。

 

特に多いのは、肋骨、脊椎、骨盤、股関節、大腿骨など。
乳がんの患部(つまり、乳房)に近く、
体幹部(体の中心)にある骨が多いようです。

 

症状としては、初期には軽度のしびれや痛みが出る程度。
進行すると、骨折や脊髄圧迫を起こすことが多く、その分痛みも強くなります。

 

がん細胞は、骨にある「破骨細胞」を活性化させることで
骨の内側に洞窟のようなスペースを作らせ、
そこに住み着いて増殖していくのです。
専門家の間では、
「シロアリが柱の内側に巣食うメカニズム」に例えられるようですね。
放置しておくと、背骨を骨折したり、
神経麻痺が起こったりして寝たきりになることも…。

 

骨転移が発覚したら、早めの治療が必要不可欠です。

 

骨転移の治療法

乳がんの骨転移は、単純エックス線(レントゲン)検査、骨シンチグラフィ、
MRI、CT、PETなどで診断が可能です。

 

「骨シンチグラフィ」という検査法は、あまり馴染みがないかもしれませんね。
これは、微量の放射性物質を含む薬剤を注射して、
専用のカメラで撮影する検査。
骨転移の部分に放射性物質が集まって黒く写ります。
この方法ならば、比較的早期の段階から
全身の骨をチェックすることができるのです。

 

乳がんの骨転移については、おおくの治療法が確立していますが、
とりわけ注目されているのは、
「ビスフォスフォネート製剤」を使った治療でしょう。
「ビスフォスフォネート」は、骨の表面に吸着することで骨表面をコーティング。
これにより破骨細胞が骨に密着できなくなり、
骨を溶かすことができなくなるのです。

 

また、溶けた骨も自然に再生され、骨折の危険や痛みも軽減します。
この「ビスフォスフォネート製剤」には、
経口薬や注射薬などさまざまな薬剤があり、
経口薬は骨粗しょう症の治療薬としても活用されています。

 

中でも、「ゾメタ」は、現在のところ
「最も強力な作用をもつビスフォスフォネート製剤」として使われています。

骨転移治療の副作用

乳がんが骨転移した場合の治療薬として多用されている
「ビスフォスフォネート製剤」。

 

「ほぼ安全性の高い」と言われている薬ですが、
ごく稀に、「腎障害」の副作用が表れる場合があります。
骨に吸着した残りのビスフォスフォネートは腎臓に排泄されるため、
腎臓に負担をかけやすいのがネック。
治療中は、定期的な腎機能検査が必要となります。

 

また、最近になって、
「顎骨(顎の骨)壊死」という副作用があることも指摘されています。
顎は、もともと血流が少ない部位なのですが、
ビスフォスフォネートによって血管新生が抑えられることで
さらに血流が悪くなり、
結果的に壊死に至ると考えられているのです。
(壊死:生物の身体の一部分を構成する組織や細胞が死ぬこと。
血液が供給されなくなったり、
火傷をした部分などに生じやすいと言われています)

 

発症率は2パーセント以下と言われていますので
それほど多くはありませんが、
ビスフォスフォネートの積算投与量が多い場合は注意が必要です。

 

口の中の衛生状態が悪い場合に起こるケースが多いといわれていますので、
治療中は口の中の衛生管理に気をつけましょう。